メタバース

Blender(ブレンダー)とは何ができる?注目の理由や作品例を解説

PCで本格的な3Dアニメーションを作成できる「Blender(ブレンダー)」。無料で商用利用でき、メタバースの開発にも使わています。プロの3Dクリエイターもプログラミングに活用している人気の3DCGソフトです。

しかし、初心者が3DCG作品を制作するのは難しいと考える人が多いのではないでしょうか。この記事では、Blenderを使ってできることや作品例、メリット・デメリットを紹介します。ぜひ本記事を参考にBlenderを利用してくださいね。

Blenderとは

Blenderとは、PCで3DCGを作成できる無料のソフトウェアです。オランダの開発者トン・ローゼンダールが、1998年に最初のバージョンをリリースしました。対応しているOSは、Windows、mac、Linux、FreeBSD、UNIXです。

作成したいイメージをモデリングし、アニメーションから出力まで一通り設定できます。現在では、メタバースやXRの開発などにも活用されているツールです。

Blenderに必要なPCの最低スペックを、以下に記載しています。

ディスプレイ 1280‪×768
メモリ 4GB
CPU 2コア32ビット2GHzCPU
グラフィックボード 1GB VRAM OpenGL

Blenderでできること

Blenderは、以下の機能を利用できます。

  • モデリング
  • アニメーション
  • リビング
  • ライティング
  • シミュレーション
  • レンダリング
  • クラウドレンダリング
  • マテリアル制作
  • 合成
  • モーショントラッキング
  • 動画編集

モデリング

モデリングとは、3DCGの元となる形の作成を指します。Blenderでは、3つ以上の点を繋げて作る「ポリゴンモデリング」や、彫刻を掘るように作る「スカルプトモデリング」が設定可能です。

モデリングを丁寧に行うと、次のステップである表面のテクスチャー選びや、色をつける作業がスムーズに進みます。完成を左右する重要な作業なので、構図やイメージを事前に固めておくとよいでしょう。

アニメーション

アニメーションとは、物体に動きをつける機能です。アニメーションを設定すると、人が歩いている様子や動物が走る動きをリアルに再現できます。アニメーションは、物体の位置や形、移動先の登録が必要です。

他には「フレームレート」の設定があります。フレームレートとは、1秒間の動画に必要な画像の単位です。フレームが少ないほどコマ送りのような見え方になり、10フレームだとロボットのような動きですが、60フレームになると滑らかな動きになります。

リギング

リギングとは「リグ」とも呼ばれる工程で、物体に動きをつけるために必要な組み立て作業を指します。

より本物に近い動きにするために「ボーン(骨格)」を作り、他の部分も同時に関連させる仕組みです。3DCGの見た目が完璧でも、ボーンが無ければ不自然な動きになってしまうので、人や動物・車などの動く物体はリギングが必要です。

ライティング

ライティングとは、3DCGに光源を設定して光が当たっているような演出をする機能です。明るさや光の当たり具合で、どのような作品に見えるか大きく左右されます。

具体的なライティングの種類は、以下の通りです。

カラー ライトの色を設定
パワー ライトの明るさをW(ワット)で設定
ディフューズ 全体的な光の反射
スペキュラー 鏡面反射
ボリューム 霧・雲のような霞みを演出
半径 影の作成に使用するライトのサイズ
カスタム距離 ライトの距離を0にする(真っ暗)
スポット形状 スポットライトのように照らす
影の範囲や大きさを設定
カスケードシャドウマップ 影の解像度を設定
コンタクトシャドウ シャドウマップでは表せない細かい部分の影を設定

シミュレーション

シミュレーションとは、対象の形状に合わせて動きをつける機能です。「液体シミュレーション」「クロスシミュレーション」「剛体シミュレーション」の3つの機能があります。

液体シミュレーションは、ガスや液体のような流体に動きを加える機能で、川や海などの再現に最適です。クロスシミュレーションは、髪の毛や布などの柔らかい物体に対して動きを設定できます。

リジットボディ(剛体シミュレーション)は、物体の重力や衝突、回転などを再現できる機能です。

レンダリング

レンダリングとは、コンピュータが管理する英数字の情報を、人間が視覚的に見られるように変換する機能です。レンダリングすると、作成した3DCGが2Dの画像や動画に変化します。

ライティングやシミュレーションを設定した作品をレンダリングし、画像や動画に変化すると、映画・アニメのように1つの作品として鑑賞が可能です。

また、レンダリングは以下の4つの種類があります。

  • Eeveeレンダリング
  • Cyclesレンダリング
  • Workbenchレンダリング
  • ライトツリー

クラウドレンダリング

クラウドレンダリングとは、データを分散してレンダリングにかかる時間を削減する機能です。自身のPCではなく、ネットに接続している別の機器が使用されるので、作業が終わるまでPCが使えないという状態を防げます。

また、クラウドレンダリングはネット上で行われるため、場所を問わず他の人とデータを共有可能です。

マテリアル制作

マテリアル制作とは、物体の表面に質感を加える機能です。プラスチックのようや艶感や、木材のようなザラザラした質感を表現できます。他にも、光の反射加減や硬度、色味、影などの設定が可能です。

また、「メタリック」の数値を高めにすると金属のような質感になり、低めにするとプラスチックのような質感になります。さらにプラスチックに近づけるためには、「スペキュラー(非金属の鏡面反射の設定)」の使用がおすすめです。

合成

合成とは、作成した3DCGと実際の写真・動画を結合させる機能です。おもに音楽アーティストのミュージックビデオやアニメに使用されます。合成機能を使用すると、実際の撮影では不可能な演出が可能です。

合成は、まずイメージに近い画像や映像の素材を準備し、次に組み合わせたい3DCGをデザインして行います。太陽の光の向きに合わせて3DCGに陰影をつけると、本物に近い仕上がりになります。

モーショントラッキング

モーショントラッキングとは、実写動画のポイント(特徴)を追跡してカメラと視点を合わせる機能です。モーショントラッキングの他に「マッチムーブ」とも呼ばれています。

モーショントラッキングの種類は以下の3つです。

  • カメラトラッキング/実写動画とカメラの視点を連動させる
  • オブジェクトトラッキング/実写動画と3DCGの動作を連動させる
  • 平面トラッキング/実写動画と平面の動き・変形を連動させる

動画編集

動画編集とは、素材の動画を分割したり不要な部分をカットして編集する機能です。動画の中に別の素材や音声をつけて、見やすい動画を作成します。無料で簡単な動画編集をしたい人におすすめです。

3DCG制作ではなく、動画編集を中心に利用したい人は、Blenderではなく本格的な別の動画編集ツールを利用するとよいでしょう。

Blenderの作品例

ここからは、YouTubeに公開されているBlenderで制作された3DCG作品を3つ紹介します。

「TOKA」高校生自主制作アニメーション

1つ目は、2021年に公開された「TOKA」高校生自主制作アニメーションです。この作品は、映像クリエイターのlanHubert氏のチュートリアルを参考に制作されました。2023年8月時点で、9.9万回再生されています。

この作品は、「人間のみならず多種多様な者たちが暮らすオーバーテクノロジーな未来都市”トーカ”での不思議な一夜の記憶」がテーマです。

制作者の高校の友人が出演しており、人ではない生き物との食事シーンや、空飛ぶ車でドライブする近未来の世界を表現しています。

「ミルキー☆ハイウェイ」自主制作アニメーション

2つ目は、2022年に公開された「ミルキー☆ハイウェイ」自主制作アニメーションです。この作品は、2023年8月時点で371万回再生されています。

地球から遠く離れた惑星間横断道路のミルキー☆ハイウェイを、サイボーグのマキナと強化人間のチハルが危険な運転を繰り広げながらドライブするアニメーションです。

この作品は動画の解像度が高く、自主制作とは思えないハイクオリティの世界が表現されています。

「異世界システム」自主制作アニメーション

3つ目は、2020年に公開された「異世界システム」自主制作アニメーションです。この作品は、2023年8月時点で47万回再生されています。

制作者の安田現象氏は、キャラクターデザインから3DCG、アニメーションまで全て1人で制作しているアニメーション作家です。異世界システムは2分37秒の本格的なアニメーションで、プロの声優も参加しています。海外の視聴者からの評価も高い作品です。

安田現象氏はYouTubeの短編アニメーションだけでなく、TikTokやInstagramでショートアニメも公開しています。

Blenderのメリット・デメリット

Blenderのメリットは、本格的な機能を無料で利用できる点です。多機能であるにもかかわらず、起動が早くサーバーダウンも防ぎます。さまざまな言語・OSに対応しており、海外のBlender利用者も多いです。

アニメーション制作やミュージックビデオ制作、YouTubeの動画制作など、さまざまな目的に合わせて使える点がBlenderの魅力と言えるでしょう。

一方で、Blenderのデメリットは、技術の習得が難しい点です。誰でも簡単に始められますが、高度な3DCGの作成にはある程度知識が必要になります。

Blenderの始め方

Blenderを始めるには、以下の3つの手順が必要です。

  1. Blenderの公式サイトにアクセス
  2. zipファイルをダウンロード
  3. zipファイルを解凍して起動

Blenderのダウンロード後は、日本語の設定や操作方法を確認して制作を開始します。

Blenderの将来性

 

 

Blenderは、20年以上前のリリースから現在も続く人気のソフトウェアです。近年、3D技術や映像技術の発達により、3DCGやゲーム、メタバースなどに関連する仕事は増えてきています。それに伴い3DCG技術を持つ人材の需要も高まっていくと思われるため、Blenderのユーザーは増えていくでしょう。

クリエイターを目指している人にとっては、Blenderが扱えることは必須条件とも言えます。Blenderを活用する企業も増えてきているため、他のツールの技術も高めつつBlenderの技術を習得しておくと役立つかもしれません。

まとめ

モデリングからアニメーションまで、多くの機能を持つBlender。メタバースやゲームの開発に使用され、日本語に対応しているので初心者も始めやすいのが魅力です。

有料の3DCGツールと近いレベルの機能を無料で利用できるため、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。