リアルな人間を模して、CGによって生み出されたバーチャルインフルエンサー(バーチャルヒューマン)。存在は知っているものの、その仕組みや作り方はよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、バーチャルインフルエンサーの作り方や制作のための費用をご紹介します。この記事を参考に、CG技術やバーチャルインフルエンサーへの理解を深めてくださいね。
バーチャルインフルエンサー(バーチャルヒューマン)の仕組みとは?
バーチャルインフルエンサーとは、CG技術によって主にリアルな人間を模して作られたインフルエンサーのことです。
厳密には、CGによって作られたキャラクターをバーチャルヒューマンと呼び、その中でも社会に対して影響力を持っていたり、商品などのPRをするためのキャラクターをバーチャルインフルエンサーと呼びます。
バーチャルインフルエンサーはCGのため実在はせず、SNSや紙面上が主な活動の場です。多くの場合顔はCG、体は実写を使って制作され、よりリアルな人間の容姿に近づければ近づけるほど時間とコストがかかります。
記事の中盤で、具体的なバーチャルインフルエンサーの作り方をご紹介します。
バーチャルインフルエンサーの開発手段
クオリティの高いバーチャルインフルエンサーを開発するためには、高い技術とコスト、莫大な時間が必要です。GUやサントリーといった大手企業がオリジナルのバーチャルインフルエンサーを制作した例もありますが、自社で簡単に作ることはできないのが現状でしょう。
一方で、AIの画像生成システムにより架空のモデル画像を作成・販売するサービスや、バーチャルインフルエンサーの企画から制作までを請け負う制作会社も存在します。このようなサービスや会社を利用することで、開発コスト・期間を抑えることができるでしょう。
バーチャルインフルエンサーの作り方
バーチャルインフルエンサーは全身をCGで作る場合もありますが、多くの場合で顔はCG、ボディと背景は実写を使用しています。今回は顔はCG、ボディと背景は実写の場合の工程例を簡単にまとめました。
なお、これらはあくまで例であり、すべてのバーチャルインフルエンサーに共通しているものではありません。
3Dスキャンでデータを作成
モデルとなる人をさまざまな角度からスキャン(撮影)し、その画像を元に3Dデータを作成します。
基本の形として無表情のデータを作成し、表情をつける場合はさらに複数の表情パターンが必要です。最終的に動画として仕上げることが想定される場合は、数百パターンの撮影が必要な場合もあります。
シワや皮膚の質感を再現
シェーディングと呼ばれる作業で、モデルの顔に肌のシワなどの模様や凹凸をつけます。バーチャルインフルエンサーはSNSや広告で顔のアップの画像を使用することも多いため、本物の人間のような肌の質感を追求するために重要な作業です。
また、スキャンできない髪の毛や眉毛なども一本一本作成していきます。
動きに変化をつける
モデルの表情を変えたり、首をかしげさせるといった動きをつけます。モデルと骨を関連付けるスキニングといった作業なども含まれます。
簡単な動きであれば数時間程度でできますが、複雑な動きになればなるほど工数も増えていきます。
ボディと背景の撮影
ボディと背景の撮影をします。CGからはみ出した元のモデルの体を消すときのために、背景は被写体なしの状態での撮影が必要です。
静止画として仕上げる場合はおおまかで問題ありませんが、動画として仕上げる場合は正確かつ緻密な撮影が必要です。
レンダリングした素材と実写を合成
モデルやライト(照明)、カメラの情報から画像を生成することをレンダリングと言い、非常に時間のかかる工程です。
最終的にレンダリングした素材と実写と合成し、Photoshopなどを使用して細かく仕上げていきます。これにより、バーチャルインフルエンサーの静止画や動画が完成します。
バーチャルインフルエンサー制作の費用
バーチャルインフルエンサーの制作と言っても、AIの画像生成システムを利用するものなのか、0からオリジナルで作成するものなのかによって費用感は変わります。
2023年2月の時点で費用が公開されていたサービス*では、バーチャルインフルエンサーのデータとSNS投稿用の写真20枚のセットで税込み184万8千円というプランがありました。
バーチャルインフルエンサーの実例
日本、世界で活躍するバーチャルインフルエンサーの実例をご紹介します。
imma(イマ)
2018年に誕生した、日本出身のimma(イマ)。ピンクのボブヘアが印象的で、主にバーチャルモデルとして活動しています。雑誌の表紙に登場したり有名ブランドのモデルを務めたりと、実在するモデルと変わらぬ活躍を見せているのが特徴です。
SNSでは、若者らしい発言やトレンドに敏感なファッションに注目が集まっています。今、日本でもっとも有名なバーチャルインフルエンサーと言えるでしょう。
ria(リア/桜海莉亞)
日本人とイタリア系フランス人の両親を持つRia(リア/桜海莉亞)。日本語、中国語、英語の3カ国語を話すトリリンガルで、身長170cmのモデル体型を活かしたバーチャルモデルとして活躍しています。
過去にimmaの弟であるZinnと交際宣言をするなど、バーチャルでありながら実在する人間さながらの生活を送っている様子が伺えます。おしゃれなInstagram(インスタグラム)にも注目です。
yu(ユウ)
2020年に大手アパレルブランドのGUが生み出したyu(ユウ)。GU専属モデルとして活動しています。他のバーチャルモデルと比べると少し背が低く中肉中背なのが特徴で、消費者が親近感を持ちやすいキャラクターに仕上がっています。
一般女性200人の体型を調査したうえで制作されており、「普通」であることを魅力としたある意味リアルなバーチャルモデルと言えるでしょう。
バーチャルインフルエンサーのメリットと可能性
バーチャルインフルエンサーの最大のメリットは、企業やブランドのイメージにぴったりの外見・性格のキャラクターを作成できることです。実在しないため、スキャンダルや炎上のリスクが少ないのも特徴。時間や場所の縛りがなく活動することができるのも魅力です。
実在する人間では成し得ない魅力が多いことから、特にファッション・美容・エンタメといった分野でのバーチャルインフルエンサーマーケティングに大きな効果が期待できます。今後、バーチャルインフルエンサーの更なる認知度拡大とともに、市場も盛り上がりを見せるでしょう。
まとめ
バーチャルインフルエンサーは、3Dスキャンで作成したデータを元に肌の質感や動きをつけ、細かい調整をしながら制作されます。作り手の技術により実在する人間のように仕上げられたバーチャルヒューマンは、今後もインフルエンサーマーケティングに影響を及ぼすことでしょう。
今後、バーチャルインフルエンサーの需要が更に高まることにより、より気軽にバーチャルヒューマンを制作できるサービスや制作会社が増えていくかもしれませんね。