CG技術によって誕生した、バーチャルインフルエンサー。有名企業がバーチャルインフルエンサーを起用していることから、近年その名を耳にする機会も多くなりました。しかし、具体的にどのようなもので、どのようなインフルエンサーがいるのか知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、バーチャルインフルエンサーとは何なのか、メリットやデメリットを含めながら初心者にもわかりやすく解説します。日本・海外で有名なバーチャルインフルエンサーもご紹介するので、この記事を読んでバーチャルインフルエンサーへの理解をグッと深めてみてください。
バーチャルインフルエンサーとは
バーチャルインフルエンサーとはCG技術により誕生した、人間として実在しないインフルエンサーのことです。CGと言ってもロボットのような印象ではなく、実際の人間と錯覚するようなリアルな見た目や個性を持っているのが特徴。
名前はもちろん年齢や出身地、性格なども細かく設定されており、CGでありながら人間味を感じることができるのが魅力です。
一般的なインフルエンサーやVTuberとの違い
一般的なインフルエンサーとバーチャルインフルエンサーの違いとしては、その名の通り現実に存在するか架空の存在であるかということ。バーチャルインフルエンサーはデジタル空間の中に存在するため、世界各国での撮影を1日でこなしたり、雲の上を歩いたりとリアルでは考えられないパフォーマンスが可能です。
また、バーチャルインフルエンサーと混合される存在としてVTuberがあります。どちらもCGで作成されている点では共通していますが、バーチャルインフルエンサーにはVTuberのようにキャラクターを動かす「中の人」が存在していないことが大きな違いです。見た目としては、バーチャルインフルエンサーがリアルな人間を模しているのに対し、VTuberはアニメなどのキャラクターのような外観が主流という点でも方向性が異なります。
ちなみに、バーチャルヒューマンはCGで作成したリアルな顔と体に、話す場合は声を、動く場合はモーションキャプチャーなどを活用して動きを付ける仕組み。実在する人間の顔や体をベースに作成することもあるようです。
バーチャルインフルエンサーが注目される理由
ここからは、バーチャルインフルエンサーが注目されるようになった理由を解説します。
リアルな人間のように見える
バーチャルインフルエンサーの最大の特徴は、実在する人間のようなリアルな外見です。これまでは、CGで架空の人間を作ると不自然な仕上がりになることが多く、限りなく人間に近付けたとしてもいわゆる「不気味の谷現象」という違和感から抜け出しきれませんでした。
しかし、技術の進化に伴い、ついに現実の人間と見分けのつかないバーチャルインフルエンサーを作成できるようになり、活躍の場を広げています。
Z世代を中心に支持されている
デジタルネイティブ世代であるZ世代を中心に人気を集めていることも、バーチャルインフルエンサーが注目される理由です。バーチャルインフルエンサーという新鮮な存在が、架空の存在を身近に感じやすくトレンドに敏感なZ世代の支持を得ています。
大企業がモデルとして起用している
近年では、ルイ・ヴィトンやコカ・コーラのような世界的な企業がバーチャルインフルエンサーを起用したしたこともあり、認知度が上がってきています。
また、GUやサントリーのような日本の身近な企業もオリジナルのバーチャルインフルエンサーを作成するなど、今後もバーチャルインフルエンサーの影響力は拡大していくでしょう。
バーチャルインフルエンサーのメリット・デメリット
それでは、バーチャルインフルエンサーを起用することでどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。順に解説していきます。
メリット
バーチャルインフルエンサーを起用することによるメリットを見ていきましょう。
- 企業やブランドのイメージに合う人物像を実現できる
- 非現実的な表現ができる
- 不祥事の心配がなく、炎上のリスクも少ない
- コンディションに左右されない
- 見た目が変わらない
- ファンが育てることができる
バーチャルインフルエンサーを起用する最大のメリットは、企業やブランド、PRしたい商品に合わせてイメージにぴったりの人物像を作り上げられることです。実在するモデルなどを起用する場合、必ずしもイメージに合った人物が見つかるとは限りませんが、バーチャルインフルエンサーであれば見た目はもちろん性格まで作り込むことができるため、理想の人物像に限りなく近付けることができます。
また、時空を超えて撮影をしたり、あえて人間ではない生き物をインフルエンサーとしたりと、人間の能力や一般常識を超えた表現ができるのも魅力。作り手がバーチャルインフルエンサーのイメージを自由に作り上げることができるため、スキャンダルに巻き込まれたりSNSでの炎上のリスクを減らすこともできます。
さらに、体調や気分などのコンディションに左右されず常に同じクオリティを保つことができるのはもちろん、歳をとらないことから見た目が変わってしまう心配もありません。逆に、少し体型を変えたり気分を変えたりするのも作り手の自由。ファンの声を元に見た目や性格を変化させたり、アンケートなどを通して関わることで、ファンがバーチャルインフルエンサーを育てる感覚を楽しむこともできます。
デメリット
現時点ではまだ未発達の段階ともいえるバーチャルインフルエンサー。そのデメリットを見ていきましょう。
- 独自で作成するにはコストが高い
- 現時点ではバーチャルインフルエンサーの数が少ない
まず、バーチャルインフルエンサーを1人作成するだけでもコストと時間がかさむことが挙げられます。魅力的なバーチャルインフルエンサーを作成するためには、顔や体だけでなく髪型やメイク、服装なども重要なポイント。これらを個人や企業が独自で作成するには膨大なコストと時間がかかります。
また、バーチャルインフルエンサーは注目を集めているもののまだまだ人数は少なく、手軽なコストで起用することは難しいのが現状です。しかし、今後バーチャルインフルエンサーの需要が高まるにつれて、バーチャルインフルエンサーを作成する企業が増えれば、コストダウンにも期待できるでしょう。
人気のバーチャルインフルエンサーを紹介
ここからは、バーチャルインフルエンサーの具体例をご紹介します。さまざまな個性を持ったキャラクターが存在しますが、ここでは、日本・世界で注目を集めている4名をピックアップしました。
imma(イマ)
2018年に誕生した、日本の女性バーチャルインフルエンサーであるimma(イマ)。目を引くピンクのボブヘアで、顔をアップで見ても現実の人間と見分けがつかないようなクオリティの高いCG技術が特徴です。東京パラリンピックの閉会式に出演したことで、認知を広げました。
おしゃれなファッションや、若者らしい言葉で発信するSNSの投稿にも注目が集まっています。バーバリーやフェラガモといった世界的に有名なブランドとのコラボレーションも経験した、今日本でもっとも有名なバーチャルインフルエンサーです。
yu(ユウ)
2020年、ファーストリテイリングのブランドであるGUが広告に起用した女性バーチャルインフルエンサーのyu(ユウ)。yuはGUが独自に作り上げた、GU専属のバーチャルインフルエンサーです。
消費者の求めるリアルな着こなしに応えるため、ランダムに選んだ一般女性200人の体型をもとに平均データを参考にしながら作成。身長158cmの中肉中背という一般的な体型で、消費者が「自分と重ね合わせやすい身近な存在」だと感じられるバーチャルインフルエンサーです。
Liam Nikuro(リアム・ニクロ)
2019年に日本で誕生した男性バーチャルインフルエンサーのLiam Nikuro(リアム・ニクロ)。出身はアメリカ・ロサンゼルス、アメリカ人の父と日本人の母を持つダブルで、日本人離れした顔立ちが特徴的です。モデルだけでなく音楽などの分野でも活躍しています。
アメリカのプロバスケットボールチームであるワシントン・ウィザーズとのパートナーシップを結ぶといった、自身のキャラクターを活かした活動も目立ちます。今後ワールドワイドに活躍していくバーチャルインフルエンサーの1人となるかもしれない存在です。
Lil Miquela(リル・ミケーラ)/ Miquela Sousa(ミケーラ・スーサ)
2016年に活動を始め、バーチャルインフルエンサーの先駆けという存在であるLil Miquela(リル・ミケーラ)。アメリカ・カリフォルニア州ダウニー出身とされ、世界でもっとも知名度の高いバーチャルインフルエンサーと言われています。
SNSでの情報発信だけでなく、歌手としてデビューするなど幅広いジャンルで活躍中。プラダやシャネルといった世界的ハイブランドをクールに着こなし、バーチャルセレブ・インフルエンサーとしての一面も持っています。
バーチャルインフルエンサーの将来性
バーチャルインフルエンサーは、その自由度からビジネスとの相性は高いと言えます。現在はファッション、美容系のジャンルとのコラボレーションが目立ちますが、今後はさらに活躍の場を広げていくでしょう。
また、2019年には株式会社yutoriが世界初のバーチャルインフルエンサー専門のモデル事務所「VIM」を解説したことも話題となりました。事務所がバーチャルインフルエンサーのマネジメントを行い、企業やブランドとのビジネスをサポートします。
バーチャルインフルエンサーはすでに海外ではメジャーな存在となりつつあります。今後、日本でも認知が広がり、日本が発信するバーチャルインフルエンサーが世界で活躍する日も近いかもしれませんね。
まとめ
作り手がCGを駆使し、顔から性格まですべてを自由に作成できるバーチャルインフルエンサー。一般的なインフルエンサーやVtuberと異なり、非現実的なアクションを起こすことができるのが魅力です。
バーチャルインフルエンサーを起用するメリットとしては、企業やブランドのイメージにぴったりな人物像を作り上げることができる、コンディションに左右されない、移動コストがかからないなどさまざまな点が挙げられます。
特にデジタルネイティブ世代からの支持率が高く、大企業の広告に起用されるなど活躍の場を広げています。これからさらにメジャーな存在となっていくであろうバーチャルインフルエンサーに、今後も注目してみてください。