CGで作られた仮想人物、バーチャルヒューマン。最近ではCG女子高生の「Saya」やバーチャルモデルの「Ria」など、テレビCMやInstagramで見かけることも増えてきました。ファッションやエンターテインメントといった商業分野でいち早く市場が形成されていますが、医療や福祉、教育分野への応用も模索されています。
この記事では、バーチャルヒューマンとは何なのか、医療分野ではどのような可能性を秘めているのかを解説しています。医療分野での活用事例やバーチャルヒューマンを導入するメリット・デメリットも紹介しますので、ぜひ最後までチェックしてくださいね。
バーチャルヒューマンとは?
バーチャルヒューマンとは、CG技術によって作られた仮想人物です。AI技術を組み合わせることにより、表情や声のトーンが再現され、人間らしいコミュニケーションが可能になりました。
バーチャルヒューマンはテレビCMや雑誌でモデルを務めたり、学生向けのイベントに登場したりするなど、さまざまな場面で活躍しています。
バーチャルヒューマンについては、下記の記事で詳しく解説しています。
バーチャルヒューマンの医療分野での可能性|活躍事例を5つ紹介
ファッションやエンターテインメントといった商業分野で、いち早く市場が形成されているバーチャルヒューマン。医療分野におけるバーチャルヒューマンの可能性を解説します。
簡易問診や遠隔医療
バーチャルヒューマンが医師やカウンセラーとして、オンライン上での簡易問診や遠隔医療を担うかもしれません。
バーチャルヒューマンが患者の相談内容に合わせて医学的助言をしたり病院受診を促すことで、医師の負担を軽減できるでしょう。
またオンライン診療が拡がることで、患者の診察へのハードルを下げたり、病院での待ち時間の軽減にも期待できます。
受付や事務
来院時の受付業務をバーチャルヒューマンが担うこともできるでしょう。誰がどんな要件できたのか、どんな検査を受ける予定なのかを確認し、受診や検査、場所の案内が可能です。
バーチャルヒューマンはデータ入力や財務管理、経理などの事務作業もできます。バーチャルヒューマンに可能な作業を任せ、人間のスタッフはより重要な業務を行うといった役割分担が可能です。これにより現場の人手不足を解消したり、残業を減らしたりできるでしょう。
患者とのコミュニケーションサポート
バーチャルヒューマンは短時間で外国語を習得でき、24時間365日稼働し、医療現場でのコミュニケーションサポートが可能です。医療現場の外国労働者が増加傾向にある現在、医療従事者・患者間だけでなく、医療従事者間のコミュニケーションサポートも期待できます。
バーチャルヒューマンは通訳としての役割だけでなく、患者の日々の話し相手になることも期待されています。会話を通して、患者の不安や孤独感を和らげたり、患者の体調を把握し、食事や睡眠などのアドバイスもできるでしょう。
患者の見守り
「車内見守りサービス」として、センサーで車内状況をモニタリングし、吊り革を握るように促す、忘れ物を検知するといったバーチャルヒューマンが開発されています。
こうしたバーチャルヒューマンの見守りサービスは、医療分野でも活躍が期待されています。病院や福祉施設に導入すれば、センサーで患者状態をモニタリングして声をかけたり、薬の時間に内服を促したりするなど、日常生活のサポートを行えるでしょう。
医療者への研修や治療シミュレーション
バーチャルヒューマンは属人化したノウハウの形式知化や物事の定量化が可能であり、全員に均一な教育を提供できます。
研修の一部をバーチャルヒューマンが担うことで、研修内容が統一でき、教育の質を高められるでしょう。人件費がかからず、研修の時間や場所を選ばないため、教育コストの削減も可能です。
また、人間の外見だけでなく、臓器や細胞、骨格をCGで作ることで、薬剤や医療機器の作用など、治療シミュレーションもできるようになるでしょう。
バーチャルヒューマンを医療分野で活用するメリット・デメリット
上記のように、バーチャルヒューマンは医療分野でも今後の活躍が期待されています。
では実際に、医療分野にバーチャルヒューマンを導入した際のメリット・デメリットはどのようなものがあるでしょうか。
メリット
バーチャルヒューマンを医療分野に導入した際のメリットは、以下の通りです。
コストを削減できる
バーチャルヒューマンが受付や事務作業、基本的なコミュニケーションを担うことで、人間のスタッフが重要な業務に時間を割くことができるようになります。
また、バーチャルヒューマンは事務作業でのミスをせず、体調不良での欠席などもありません。そのためスケジュール管理がしやすく、業務の効率化を図ることが可能です。人件費や残業代など、コストの削減に期待できます。
外国語に対応できる
バーチャルヒューマンは外国語をプログラミングすれば、何ヶ国語と縛られることなく、世界中の人とコミュニケーションをとれます。
24時間365日活動できるため、外国語を話せるスタッフが勤務していない時間でも、患者とのコミュニケーションで困らなくなるでしょう。
学習能力が高い
バーチャルヒューマンは、人間が学習したら時間がかかる情報量でも、短時間で学習可能です。また、人間と異なり忘れることもなく、知識のアップデートも短時間でできます。
それにより教育に時間をかけることなく、現場で即戦力として活躍できるでしょう。
デメリット
バーチャルヒューマンを医療現場に導入する際のデメリットは、以下の通りです。
情報漏洩の可能性がある
バーチャルヒューマンはコンピューター上で、患者情報など個人情報を取り扱うことがあります。万が一ハッキングをされた場合、情報が漏洩してしまうかもしれません。
そのため、バーチャルヒューマンの発展とともに、セキュリティ対策も強化していく必要があります。
バーチャルヒューマンに不快感を持つ人もいる
バーチャルヒューマンに、不気味さや嫌悪を感じる人もいるでしょう。
人間に似すぎる存在を見ると嫌悪感を抱くという、「不気味の谷現象」。人間への類似度が上がるにつれて好感度が上がっていくものの、一定レベルまで人間に似てくると谷のように好感度が下がり、嫌悪感を抱きます。しかし「不気味の谷」を乗り越えると、逆に親近感が湧くとされている現象です。
相手に不快感を与えないために、この不気味の谷を超えるキャラクターを開発していく必要があるでしょう。
まとめ
CG・AI技術の進歩によって、人間らしい活動が可能となったバーチャルヒューマン。医療分野にバーチャルヒューマンを活用することで、人間のスタッフが重要業務に集中できる、受診のハードルが下がるなど、医療従事者と患者双方の負担を減らせるでしょう。
個人情報保護などの課題もありますが、バーチャルヒューマンの医療分野への実用化に期待が高まりますね。